その他の疾患

case1:
犬のアミロイド産生性歯原性腫瘍/吻側上顎骨切除術・口腔前庭-粘膜下組織フラップ形成

愛犬の口の中が腫れてきたとのことで来院されまた。
視診では右上顎犬歯歯肉を中心に、
硬結感を有する腫瘤が認められました。
経過から悪性腫瘍を疑い、
各検査から手術適応と判断しました。

写真は術前の外貌です。
右上顎歯肉に顕著な歯肉の腫れ/腫瘤の形成を認めます。


開口させると硬口蓋にも腫瘤が浸潤しており、
腫瘤による骨組織の破壊も考えられました。

このため、
手術はマージンも含めた吻側上顎骨切除を
適応とし、両犬歯から鼻先の顎骨を
切除いたしました。
また術後の呼吸管理の容易し、かつ
外貌の著しい変化を防ぐために
鼻軟骨は温存いたしました。

口腔外科は術後の採食など、
術後経過を良好なものとするために、
鎮痛の管理が非常に重要となります。
今回は術中鎮痛は強オピオイドのほか、
局所麻酔として両眼窩下神経ブロックも
併用いたしました。

上顎骨切除後は、
口腔前庭-粘膜下織よりフラップを形成し、
鼻腔内気道の狭窄を最小とするためにT字状に
縫合いたしました。

術後は鎮痛の効果もあり
すこぶる元気で食欲も旺盛でした。
口の違和感もなくなったせいか
以前よりもよく食べてくれているようです。
また口腔外科では多くの症例で外貌の変化を
伴いますが今回は鼻軟骨温存により最小限に
抑えることができ、飼い主様も
安心しておられました。

病理学的診断はアミロイド産生性歯原性腫瘍でした。
比較的珍しい良性腫瘍ですが局所浸潤が強く、
臨床的には悪性の挙動を示します。
今回はマージンも確保したことから完全切除すること
ができました。